はじめての GPL

GPL とは何か?

WordPress はフリーソフトウエアです。世界中で多くの人々がボランティアで開発し、メンテナンスしています。また WordPress はフリーソフトウエアであると同時にオープンソースソフトウエアです。エンドユーザーには、オープンソースソフトウエアを「実行」「研究」「再配布やコピー」「改良」する自由 (Freedom) があります。

これら「4つの自由」は General Public License (GPL。GNU 一般公衆利用許諾書) として成文化されています。GPL はコピーレフトのライセンスです。そのライセンスのソフトウエアから派生したソフトウエアを再配布する場合には、同じライセンスの下でのみ再配布できます。GPL は元々 Free Software Foundation (FSF。フリーソフトウェア財団) の Richard Stallman が GNU プロジェクトのために作成しました。

WordPress はブログソフトウエア「b2」をフォークして作成されました。b2 は GPL 下でライセンスされていましたので、GPL の適用は必須であり、WordPress もまた GPL ソフトウエアです。他に GPL でライセンスされ広く成功したソフトウエアとしては、Linux カーネル、GNUコンパイラコレクション、Drupal があります。

WordPress および GPL の背景については以下の資料を参照してください。

WordPress and the GPL (日本語字幕選択可)
Themes are GPL, too
Why WordPress Themes are Derivative of WordPress

GitHub 上の WordPress History 内

Premium Themes
Themes are GPL too
Thesis
WordPress Guidelines
The Spirit of the GPL

WordPress が無料なら、テーマやプラグイン、サイトの構築や講習も無料では?

WordPress 本体のソフトウエアは無料ですが、WordPress を使う際に必要なその他の部分は有料の場合があります。Web サイトのホスト用に自分でサーバー機器を購入するのでなければ、レンタルサーバー会社から有償でレンタルする必要があるでしょう。望みどおりの Web サイトが欲しければ、自分で勉強してサイトをデザインし構築するか、あるいは希望の WordPress テーマを購入するかでしょう。WordPress の使い方を覚える場合も、ドキュメントを読んでトライすることが難しければ、誰かを雇って教えてもらう必要があります。WordPress 本体に付属しない機能が必要な場合、プラグイン作成を一から勉強するのでなければ、同じ機能を持つプラグインを購入する必要があるでしょう。

現在、wordpress.org の公式リポジトリには多くの素晴らしい WordPress テーマやプラグインがあります。これらはコードレビューされていて、あるレベルのコード品質が保たれている上に、無料です。大勢の人が無料のテーマやプラグインだけを使用して Web サイトを構築し満足しています。一方で「プレミアム」な WordPress テーマやプラグインを好む人もいます。テーマやプラグインの開発元や開発者から追加のサポートを得られるためです。

WordPress コミュニティで収入を得るには?

WordPress コミュニティには WordPress ベースのビジネスでうまく生計を立てている人もいます。WordPress コミュニティで収入を得るには、大きく次のような方法があります。

1) SaaS (Software as a service)
2) トレーニング
3) ホスティング
4) Web 制作

一つずつ見ていきます。

1) SaaS (Software as a service) モデルでは、テーマやプラグインの開発会社はソフトウエアの自動更新、バグ修正、サポートなどを時間単位、サイト単位、またはその両方のサブスクリプションとして販売します。サイト単位で、これらのサービスへのアクセスを販売できますが、サイト単位で、テーマやプラグインの使用を制限することはできません。これは GPL に違反します。

プラグインやテーマの開発会社を検討する場合は、サービス条項やライセンス情報、そして価格体系をよく見てください。価格のページでテーマやプラグインを利用可能なサイトの数を制限している場合、この条件は GPL に違反します。

2) トレーニング: WordPress の使い方に関しては多くの情報が無料で提供されています。たとえば WordPress.tv や Codex などです。一方で WordPress のトレーニングを有償で行う有能な講師も多数います。有償のトレーニングは GPL ライセンスにまったく抵触しません。ただし WordPress の使い方を教える際にはライセンスについても触れてくれることを期待しています。🙂

3) ホスティング: 「WordPress.com」では誰でも無料で WordPress のサイトを入手できます。しかし WordPress.com で許可されない、あるいは推奨されないことを実行するにはレンタルサーバー、そして恐らくはドメインも契約する必要があります。自分でサーバー機器を購入し、Web サイトを構築、運用することもできますが、レンタルサーバーで上位のオプションを契約するよりも高くつくでしょう。

4) Web 制作: WordPress で個人向け、法人向け専用の Web サイトを誰かに構築してもらう場合、通常は Web 制作会社に相談します。Web 制作会社は個人事業から千人規模の会社までさまざまですが、WordPress に特化した多くの会社があります。これは WordPress を使用すると比較的容易にクライアントの要件を満たせること、そしてオープンソースソフトウエアが高品質なソフトウエアだと信じているためです。

Web 制作会社または Web 制作会社の成果物を検討する場合は GPL の適用範囲が WordPress の派生物でも再配布されるもののみであることに注意してください。WordPress のテーマやプラグインを個人利用、ビジネス利用の目的で作成した場合、GPL はそのテーマ、プラグイン、派生物を、一般に公開するところまでは求めていません。Web 制作会社が作成したすべてのカスタムテーマについてライセンスを調べる必要はありません。


このページの文章は、WORDCAMP ORGANIZER HANDBOOK の「GPL Primer」を翻訳したものです。

翻訳者: Akira Tachibana
最終更新日: 2020年6月15日